日本の法律上、離婚をするときには、子の親権者を父か母のいずれかに定めなければならないとされています(民法819条)。
そのため、離婚の話し合いをすすめていくなかで、離婚自体は合意しているのだが、親権者をどちらとするかで揉めてしまい、離婚の話がすすまなくなってしまうことがあります。
そこで、父母の一方が離婚調停を申し立てて、調停上の話し合いによる解決を目指すことになるのですが、父も親権が欲しい、母も親権が欲しい、という両者の願いが、調停上平等に扱われているのかというと、父親にとっては絶望的な統計結果がでております。

平成21年の司法統計によりますと、離婚調停となった場合に、父親が親権者となっているケースは全離婚調停事件のうちのわずか1割ほどにすぎません。
9割を超えるケースが、母親を親権者とする形で決着されています。
もちろん、親権を主張しない父親も相当数おりますし、申立件数のうちの半数以上が父親に問題があるケースなのかもしれませんので、その点の考慮はするとしても、それでも1:9は偏りすぎではないか。

調停実務上、何十年の長きにわたり、子(特に幼い子)は母親のもとで育てられるのがよい、といった考え方が支配的でした。
そのため、調停の席上で、父(夫側)がいくら自分が育てたいと主張しても、そうはいっても旦那さん、奥さんがちゃんと育てるといっているから、奥さんに虐待などの事実がない限り、旦那さんの主張はとおらないよ、判決になっても同じだから、そこはもうあきらめて。お子さんへの関与は、養育費という形で貢献できますから、などという説得があちらこちらで行われてきました。

つまり、子を思う父の気持ちが、無視されている。

妻と離婚するのはよいが、なぜ子どもとの生活まで奪われなければならないのか。
男性のこの素朴な感情はとても自然なものですので、以上のような説得が、男性の心に響くことはないでしょう。

もちろん常習的な暴力傾向や酒乱などの性向や、生活費をいれないなどの事情から、妻から離婚を申し立てられても仕方がないようなケースであれば、そのような説得も理解できます。
しかし、私が見る限り、子育てもちゃんとやっていけるだろうなと判断できる男性に対しても、調停委員の説得スタンスは基本的には変わりません。
母子の絆は大切だから、お子さんはお金(養育費)で助けてあげて、なんて、いわれたりもする。そういうことではないのに。

つまり離婚調停とは、夫にとって、妻が望む大枠の離婚条件、すなわち、「子とは別居してください」「養育費は払ってください」「子との今後の面会については、必ずしも夫の望む形での面会は保障されません」という条件を、どのラインで譲歩して承諾していくかを決める手続にすぎず、父が子と同居生活して成長を見届けたいという思いについてはとにかくあきらめるよう説得される場であるということになります。
これは厳然たる事実で、そのように考えなければ、父親が親権を取得するケースがたかだが1割にしかならないことの説明がつきません(父が親権を断念する率9割の異常性)。

夫婦が離婚しても、子との関係においては、父は父、母は母であることに変わりありません。
なぜ「親権」に限って、父母の一方のみを親権者としなければならないのか。
私はこのような法律があるせいで、、離婚調停中の父が精神的に追い詰められ(子までとられるほど、俺は悪いことはしていないのに。。面子がつぶされる、子に対する喪失感)、父と母の離婚後の協力関係の断絶がおこってしまっているとみています。どうせ親権はとれないよ、との説明を受けた父親(あなた)は、はたして正気でいられますか。

私は、離婚後も親権は父と母が離婚前とかわらず、共同して行うという形に法改正をしたほうがよいと思っています。子との同居生活を奪われる親にとっては、親権まで奪われるというのと、親権は離婚前とかわらず元夫婦が共同で行うものだという建前が維持されるのとでは、その調停を円満に解決していこうと思わせるかどうかについて大きな違いがあるとみています。そうなれば、親権の帰属を争点に調停が長引くということもなくなり、あとは、どちらの親の下で生活することが、子にとって望ましいのかという事実上の問題に絞って話をつめていけばよいのでいいことだらけです。

私は、父(とくに妻から三行半を突き付けられたような父にとってはなおさら)の、面子やプライドを過小評価してはならないと考えています。
離婚調停であらゆる駄目だしをされた挙句、子どもまでとりあげられてしまう。。
そのような気持ちにさせないためには、離婚後も父の親権を失わせない、つまり母との共同親権が維持される法律改正が必要です。
どうしてもその父が親権者として不適格という事情があるのであれば、それを理由にその親の親権を喪失させる手段も存在しておりますので、不都合もありません。

そこでこの事件(こちらをクリック→文京区立潮見小学校父親焼身自殺小学校三年生次男道連れ事件)です。
事件がおこった後になって、こんな夫に子を会わせられるわけがないとみるのは簡単です。
しかし、このような夫だったからこそ、離婚調停の話し合いにおいて、その言い分は水素より軽く扱われていた可能性もあり、何を言っても聞き流されるのみで、むしろ、あなたが悪かったのだから、離婚も親権断念も当然だよという説得だけがなされていたのだとすればどうでしょうか。
自分に原因があるにせよ、皆から責められてしまい、味方のいない状況に、追い詰められ、屈辱感にまみれた挙句の凶行だったのか。

どうすれば防げたのか、考え続けたいと思います。

追記:この記事は事件発生日(平成25年12月23日)直後に、私のフェイスブック(→こちらをクリック)に投稿したものです。後日、道連れとされた男の子は天に召されてしまいました。

(参考)時事通信社のサイト→http://www.jiji.com/jc/zc?k=201312/2013122300107


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青島 克行

青島 克行弁護士・保育士・宅地建物取引主任者

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昭和50年9月17日生
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