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離婚無効|離婚届にサインをした後、気が変わってしまったらどうなる?

最高裁昭和34・8・7第二小法廷判決(最高裁昭和32年(オ)第508号離婚届出無効確認請求事件)

一旦提出された離婚届の効力に関する、超有名判例です。

離婚無効|どんな事案だったのか?

離婚届の作成を完了した日から、
実際に婚姻届が提出されるまでに数日のタイムラグが生じているうちに、
離婚届の提出を妻側に委ねていた夫が、
やはり離婚したくなくなってしまったというケースです。
夫が、離婚届出の無効確認を求めて提訴しました。

離婚無効|裁判所の判断は?

第一審も、第二審も、夫の請求どおり、
妻が提出した離婚届出の効力を否定しました。

離婚届出が有効であるためには、
離婚届の作成時ではなく、
離婚届の提出時に、
離婚の意思があることが必要であるとしたのです。

離婚無効|どういう事情があったのか?

この判断の背景には、
夫がとっていた、次の行動についても、
配慮があったのではないかと思われます。

この夫は、気が変わった直後には、自ら役所に出向き、
妻から離婚届の提出があっても、
自分は承諾していないから、受理しないでほしいと、
申し出ております。
しかし、役所は、離婚届の提出は、
書面審査であるから、届け出がある以上は、
受理しないわけにはいかないと回答し、
実際、後日に妻が離婚届の提出にくると、
その届出を正式に受理してしまったという経過です。

つまり、裁判所としては、
いくら、妻が、適式に作成されたように見える離婚届を、
役所に提出しようとしてきたとしても、
その前に、夫が、明らかに離婚する気持ちがないことを、
役所に伝えてきた以上は、
その時点より過去に作成された離婚届をもって、
離婚を成立させてしまうわけにはいかない、
という判断をしたのだと思います。

一方で、妻は、
夫は、少なくとも、翻意を相手方(本件では妻)に伝えるべきであって、
それをしなかった以上は、妻が提出した離婚届による協議離婚は、有効である、
と主張して、控訴、上告して、その決着は、最高裁に持ち込まれました。

離婚無効|最高裁判所の判断

最高裁は、次のように述べて、妻が提出した離婚届による協議離婚は無効であるとしました。

《妻から届出がなされた当時には夫には離婚の意思がなかったものであるところ、
協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、
本件のごとくその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になった以上、
右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない》

妻側は、協議離婚について翻意をしたのであれば、
その翻意を相手方(ここでは妻)に表示するべきであり、
その表示がない限りは、その翻意に効果はなく、
翻意前に作成された離婚届の提出による協議離婚は、
有効に成立しているものとみるべきであると主張したようですが、
最高裁は、妻側に対する翻意の表示は必要ないとして、
提出時点で、夫に離婚の意思がなかった以上は、
妻が提出した離婚届による協議離婚は無効であるとしたのです。

離婚無効|離婚届の提出を防ぐ方法はあるのか?

実はこの出来事の直後の昭和27年7月9日民事甲第1012号民事局回答によって、
あらかじめ離婚届の不受理申出を役所にしておけば、離婚届が提出されても、
受理しないという扱いが認められたため、
今後は、このような紛争が起こる可能性は極めて低いものとなっております。
55年を経た平成19年には(ようやくといいますか)、
不受理申出の制度が、役所の事実上の扱いではなく、戸籍法上の制度となりました。
なので、もし、本事例の夫のような状況に陥ったときは、
すぐに役所に出向き、離婚届不受理申出をしておくことで、
作成済みの離婚届が提出、受理されてしまって困る、ということは生じません。

離婚無効|青島弁護士の経験したケース

私は夫が提出した離婚届の無効を妻から主張されたケースの夫側代理人として裁判を担当したことがあります。
夫は無事勝訴したのですが(妻の離婚無効確認の訴えが棄却された)、両当事者の尋問まで実施して、
楽な裁判ではありませんでした。
離婚届の提出に効果を争う方(離婚無効を主張する方)は、
自分が、離婚届の提出時点において、離婚の意思がなかったことを、自ら証明する責任を負わされております。
なので、原告側が基本的には、主張も立証も大変なのですが、
原告側(離婚無効を主張)が、主張をがんばればがんばるほど、
被告側(離婚は有効だと反論)も、あらゆる間接事実を根拠にあげて、相手方の離婚意思(届出時点の)は明らかであると、
細かく、具体的に主張、立証していく必要があるため、
相当の労力がかかるのですね。

離婚届は不用意にはサインしない、ということと、
もしサイン後に翻意したのであれば、直ちに、離婚届の不受理申出を役所にするということが、
この裁判例からの教訓ということになりましょうか。
離婚届を預かって、提出することになった側としては、
今から提出してくるね、と一言メールでも電話でも連絡をいれて、相手がとくに争っていないことの証拠を残しておく、
ということも、その後の紛争の防止のためには必要なことでしょう。
(但し、その確認が寝た子を起こすということもありうるのでそこは注意が必要ですね)

(民集13巻10号1251頁)


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