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離婚と宝くじ

離婚(財産分与)と宝くじ|離婚前に宝くじがあたったら??

問題
離婚前に宝くじで2億1000万円が当たりました。
このお金は、離婚の際の財産分与で、別れる相手に分け与えなければならないのでしょうか?

離婚(財産分与)と宝くじ|当事者の思惑

あなたが購入した宝くじだったらどうです?
離婚後に当選していれば、一円たりとも渡す必要がないものです。
それが離婚前に当選してしまうと、財産分与の対象として、相手にも配分しなければならないとしたら。。
このことに納得はいくでしょうか。

あなたのパートナーが購入した宝くじが当たったら、どうです?
自分が購入したわけじゃないから、もらえるわけがないと素直に思えるでしょうか。
相手ばかりがほくほく顔で、夫婦だったのに自分には取り分がないということに納得はいくでしょうか。
婚姻期間中で購入したものだから、離婚時にも当然分け前として要求できて当然だ、と思うのでしょうか。

人は往々にして、自分に都合の良いように考えてしまうものですが、
この点について判断した、面白い裁判例があるので、紹介いたします。
夫が毎月自分の小遣いから約2,000円の宝くじを購入していたところ、結婚後13年目に2億1000万円の高額の当選金を得て、その数年後に離婚をしたという事例です。
妻が夫に対し、これら当選金を含む財産について、自分にも取り分があるとして、離婚に伴う財産分与を申立てたのです。

離婚(財産分与)と宝くじ|東京高等裁判所の判断

東京高等裁判所は、妻の取り分を当選金の4割としました(東京高等裁判所平成29年3月2日決定(平成28年(ラ)第1832号財産分与審判に対する抗告事件))

理由として、
(1)宝くじの購入資金は、婚姻後に得られた収入の一部である小遣いのから拠出されたこと
(2)当選後の使途も、自宅のローン返済、生活費に充てられていること
(3)そうすると、本件当選金を原資とする資産(預金、保険、不動産)は、夫婦の共有財産と認めるのが相当である。
としています。

みなさん、この東京高等裁判所の判断はどう思われますか。

夫が小遣いから毎月約2,000円を買っていたという宝くじ。
これが夫の小遣いといえど、婚姻後の収入の一部なのだから、それで購入して当選すれば、その当選金は当然、夫婦の共有財産になるし、離婚するのであれば、その4割を妻に財産分与しなければならない、と東京高等裁判所が言っているのです。
しかし、これは説明になっているのでしょうか。

だって、意味がわからないではありませんか。
夫の小遣いのなかから買ったのだから、それはもう夫婦の共有ではないという考えだってありうるわけです。
逆に、妻が夫から委ねられていたお金(妻の小遣い分を含むとして)で、宝くじを買ったとして、それが当選したとして、同じような理屈で、夫にも当選金を払え、それも4割も払えといわれて、すべての妻がすんなり納得するでしょうか。私の小遣いのなかから買ったのだからそれはもう夫婦の共有ではないという考えだってありうるわけです。
妻も共働きで自分の稼ぎを得ているケースであれば、より一層そうなるのではないでしょうか。
私は夫の助けなど借りずに、自分の収入のなかから宝くじを買ったのだ、なんでその当選金の4割も夫に渡さなければならないのだ。こんな考えだってありうるわけです。

そもそも宝くじを買うか買わないかは、あくまで買った人の判断、決断の賜物であって、買わなければ当選金を得られることはありえなかった(買わない宝くじは当たらない)。
当選金があるのは、100%、購入した人のおかげではないのか。
買った宝くじが、当たるか当たらないかについても、完全に運の話です。
むしろ当たらないのが当然で、当たる方がおかしいぐらいの確率のものです。
この運があったのは、100%、購入した人のおかげではないのか。
自分の配偶者が、たまたま購入した宝くじが、たまたま奇跡的に当選したからといって、その当選金についてまで、夫婦で共有されるべきものである、などという結論に無理やりひっぱらなければならない絶対的な必然性などないわけです。少ない小遣いからけなげに購入して、運よく当選した、購入者の固有の財産であって、そこに配偶者が口出しする権利はない、という考え方だって成り立ちうるわけです。

つまり、東京高等裁判所による判断は、単に、高等裁判所の裁判官が、「婚姻後に得られた収入から購入した宝くじの当選金は夫婦の共有財産と考えるべきで、離婚の際には、清算の対象(それも4:6で)になるべきなのだ」という、感覚的な結論(価値判断)を一方的に宣言しているだけなのです。そこになんの理由も示されてはいません。

ちなみに、東京高等裁判所の判断はこれで確定しております。夫は納得しているのかなぁ。。預金もある程度は残っているし、もういいや、面倒だから、これ以上争うのはやめた、というのが彼の正直な気持ちで、心から納得したわけではないのではないかな、と、私は思ってしまっております。

実は、原審は、高裁とは全く違った判断をしております。

離婚(財産分与)と宝くじ|前橋家庭裁判所高崎支部の判断

面白いことに、前橋家裁高崎支部の裁判官は、妻の取り分を当選金の1割5分としました。
その説明として、
(1)宝くじの購入資金の原資が夫婦共有財産である家計の収入から支出されていたとしても、宝くじの当選金が当然に全額が夫婦の共有財産になるものではない。
(2)購入者には当選金について一定の優位性、優越性が認められる。
(3)当選金のうち、7割が購入者の固有財産で、3割が夫婦共有財産である。
(4)結論として、本件の場合、妻が取得できるのは、当選金の3割相当額を折半した金額分である。
としています(前橋家庭裁判所高崎支部平成28年9月23日審判(平成27年(家)第26号))。

東京高等裁判所が、妻の取り分を当選金の4割としたことと比べると、妻の取り分が当選金の1割5分というのは、いかにも少ないですね。
妻からしたら、鬼のような判断が下されたといえましょうか。
しかしながら、妻が購入者だった場合は、同じように夫からの配分要求を封じるわけですので(妻の取り分8割5分、夫の取り分1割5分となる)、前橋家裁高崎支部の裁判官が、とくに男尊女卑の判断をしたわけではありません。
要は、宝くじの当選金の8割5分は、購入者が取得するべきだ、というのが前橋家裁高崎支部の価値判断であったということです。
しつこいですが、こちらの判断も別に論理的と言うわけではなく、前橋家裁高崎支部の裁判官は、「宝くじの当選金は、離婚の際、85%を購入者に、15%を購入者でないほうに分け与えよ」と宣言しているだけにすぎず、そこになんの理由も示されておりません。

離婚と宝くじ|裁判の恐ろしさ

本件に限らず、裁判所の判断というものは、担当裁判官の価値判断次第で、どんな判断でもできてしまうという危うさが常にあります。
だから私は、訴訟代理人をしていて、時々、空しくなる。

恐ろしい現実として、知っておいていただければと。

ちなみに。
この事例は、宝くじの当選から離婚までの間に、そのお金をつかってローンを完済したり、夫が仕事をやめて投資家になるもうまくいかずに、仕事に戻ったりという、それなりのドラマがあり、家庭生活も数年間継続されていたという事案です。
これが夫婦関係がうまくいっておらず、離婚までのタイミングがもっともっと短い場合は、別の判断がありえそうな気もしますが、どうでしょう。
当選した方は、絶対に渡したくないと思いそうですね。
裁判所はどのように判断するのでしょうか。
裁判所はそれでも購入していない側の取り分をゼロにはしなさそう。。。というのが私の感覚です。
なぜって?
裁判所の判断は、理屈じゃないから(ゼロは、なんか、かわいそう、という理屈と無関係な結論ありきで判断することは十分ありうる)。


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