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面会交流を拒否した妻に対し間接強制を命じたケース|最高裁平成25・3・28第一小法廷決定

面会交流を拒否するとどうなる?|最高裁平成25・3・28第一小法廷決定(最高裁平成24年(許)第48号 間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件)

元夫と子との面会交流を拒否した元妻に対し、裁判所が間接強制(拒否1回につき、元夫に5万円を支払うこと)を命じたというケースです。

面会交流を拒否するとどうなる?|どんな事案だったのか?

事実経過の概略は次のとおりです。
平成18年1月  子出生
平成22年11月 裁判離婚(親権者は母)
平成24年5月  面会交流の審判が下される(6月に確定)。
審判で定められた、面会交流要領は次のとおり。
①日程につき、毎月第2土曜日午前10時から午後4時までとする。
②場所につき、元夫の定めた場所(但し、元夫の自宅以外)とする。
③方法につき
・受け渡し場所は、元妻の自宅以外の場所とする(協議で定める。協議が整わないときは〇〇駅〇口改札付近とする)
・元妻は、受け渡す場面以外には、元夫と子との面会交流には立ち会わないこととする。
・病気などの事情で面会交流ができなかったときは、代替日を決めることとすること。

平成24年6月  元夫からの求めにも関わらず、元妻が、元夫と子との面会交流を拒否した。

。。。。。。

この事案では、元妻が、元夫と子との面会交流に協力的ではなかったのでしょう(理由は不明)、離婚から2年半が経過した後、元夫から、札幌家庭裁判所に対し、元夫と子との面会交流することを認めるよう妻に命じることを求める申立て(面会交流を求める調停、審判)が起こされております。
そして、札幌家庭裁判所は、元夫からの申立をうけて、元妻に対し、上記面会交流要領のとおりの内容での元夫と子との面会交流を許さなければならないとの審判を下したという経過です。

それにもかかわらず、審判直後から、元妻は、あいもかわらず、元夫からの求めを断固拒絶して、元夫を子に会わせませんでした。
家庭裁判所に、面会方法に関するルールを定めてもらったにもかかわらず(上記平成24年5月の審判)、元妻がそれを守らない場合、元夫としてはもうどうしようもないということになるのでしょうか。無理やり子どもに会いに行ってしまってもいいのでしょうか。どうすればいいのでしょうか。

面会交流を拒否するとどうなる?|面会交流を拒否されたときに、できることは何か

妻が裁判所の下した審判を無視する以上は、あとは、元夫としては、子どもも無理やり連れ戻したり、突然、会いに行ってしまおうか、というところに行きそうではありますが、そうはならなかったところがこの男性のえらいところです。
といいますか、すでに、元妻側からの面会交流の拒絶対応をうけて、弁護士に相談して、面会交流を求める審判(なり調停を申し立てて)、裁判所からの審判を得たにもかかわらず、それでも元妻が裁判所の審判に従わないという経過ですので、この男性も弁護士も、心の準備はできていたのかもしれません。元妻は裁判所からの命令を無視してでも、私(元夫)を子どもに会わせない可能性はあるなと。

次にこの男性がどんな手段をとったのかといいますと、
「元妻が子に会わせないのなら、その都度、元妻が、元夫に対し、5万円のペナルティを払わなければならない」ということを命じる審判を、さらなる妻の面会拒否をうけて、すぐに家庭裁判所に求めたのです。

面会交流を拒否するとどうなる?|裁判所の判断

その後、経過は次のとおりです。

平成24年7月  元夫が、家庭裁判所に対し、上記審判に基づく間接強制(違反について、妻に金銭の支払を命じる)決定を求める申立を行った。
平成24年9月  家庭裁判所(原原審)は、不履行1回5万円を元妻に支払うよう命じる間接強制決定をした(札幌家裁決定平成24・9・12。民集〔参〕67巻3号880頁)。これに対し、妻が執行抗告を申し立てた。
平成24年10月 高等裁判所(原審)は、妻の執行抗告を棄却した(札幌高裁決定平成24年10月30日。上記民集〔参〕884頁)。これに対し、妻が許可抗告を申し立てた。

元夫の申立をうけて、家庭裁判所は、元夫の申立を認めて、元妻に対し、面会させなかったこと1回につき、5万円を払うよう、元妻に命じました。
元妻が、それを不服として、高等裁判所に再検討を求めましたが、高等裁判所も、元夫の申立を認めました(元妻からの不服申立てを棄却しました)。

元妻も頑なな対応で、ある意味、一貫しています。
元妻は、元夫に子との面会交流は許さない(ことが正しい判断である)との信念があったのでしょう。
元妻は、家裁、高裁の判断にもめげず、最高裁判所の判断を求めて、許可抗告を申し立てたのです。

面会交流を拒否するとどうなる?|最高裁判所の判断

最高裁判所も、妻の申立を認めませんでした(抗告棄却)。
要は、一旦、子を監護している親(子と同居して、子どもの養育を日々行っている方の親。監護親)に対し、そうでない親(非監護親)が子と面会交流することを許さなければならないと命ずる審判(本件でいうところの、前記平成24年5月の審判)が下された以上は、それを守らない監護親に対しては、裁判所は、さらに(非監護親からの申立を受けて)、間接強制(民事執行法172条。子に会わせない対応をするたびに、相手方に、罰金のようなお金を払わなければならないことを命じる。そうすることで、間接的に、会わせるように強制していく)決定を下すことができることを認めて、家庭裁判所(平成24年9月の原原審)、高等裁判所(平成24年10月の原審)の判断が正しいものと追認したのです。

この最高裁の判断をうけて、元妻は、このまま元夫と子との面会交流を拒否し続ければ、その都度、5万円を元夫に支払わなければならないことが確定しました。
今はどうなっているのでしょうね。
毎月1回の面会を1年拒否しつづけると60万円の支払義務が発生します。
この負担は重いので、元妻も、さすがに今は態度を改めて、元夫と子との面会交流を再開させているのではないかと思います。

面会交流を拒否されないために|どうしておけばいいのか?

もっとも、子との面会交流を拒否されたからといって、すべてのケースでこのような間接強制が認められるわけではありません。

もしあなたが非監護親になってしまったら。。
そして、別れたパートナー(監護親のほう)から、子との面会交流を拒否されてしまったら。。
まずは、家庭裁判所に、別れたパートナーを相手方として、子との面会交流を求める調停あるいは審判を申し立てる必要がでてきます。

そこで、ここからが肝心なのですが、
最高裁判所は、面会交流を求める調停なり審判における、
裁判所が下す審判や、裁判所で合意した内容が記載される調停調書の条項において、
面会交流の日時・頻度・方法などの一定の事項が具体的に定められていることで、
監護親がするべき行動(給付)の内容(非監護親と子との面会交流をどのような形で実現させるか)が具体的に特定している必要があるとしております。

つまり、せっかく面会交流を求める調停において合意をしたり、面会交流を求める審判が下ったとしても、その中身が、単に、毎月1回面会交流を実施することを約束する、といった簡単なものであったり、抽象的な約束にとどまるものである限りは、後に、会わせてくれないという事態が生じたところで、上記の事例において、元夫が行ったような、面会拒否1回ごとに5万円を払うことを強制する審判を求める申立をすることができず、改めて、面会交流の日時・頻度・方法などについて具体的な給付内容が特定させるための調停なり審判の申立をしなければならなくなってしまうのです。
通常の離婚調停などの場合は、面会交流でここまで揉めることを想定していないことも多く、面会交流の日時・頻度・方法などについて具体的に定めないで(月1回会わせるといった程度の緩やかな合意)すますことも珍しくありません。たしかに細かく定めないほうが、当事者同士で、その都度、融通を利かせられるというメリットもあるのですが、本件における最高裁の判断をみる限りは、監護親が面会拒否をするようになってきたときには、改めて、面会交流の日時・頻度・方法などについて具体的に定めるための調停なり審判を申し立てなければならなくなるというデメリットも一応頭に入れておいたほうがいい、ということになります。

最高裁平成25・3・28第一小法廷決定(最高裁平成24年(許)第48号 間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件)
(民集67巻3号864頁、判例時報2191号39頁、判例タイムズ1391号122頁)
なお、上記決定(面会交流の審判に基づく間接強制ができることを明らかにした)と同様、面会交流の調停調書に基づく間接強制が可能である旨を判示した事例として、
最高裁平成25・3・28第一小法廷決定(たまたま?上記決定と同じ日付の決定。判例時報2191号46頁②事件)


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