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有責配偶者からの離婚請求が認められたケース

有責配偶者からの離婚請求|最高裁昭和62・9・2大法廷判決(最高裁昭和61年(オ)第260号離婚請求事件)

有責配偶者からの離婚請求を認めた、超々有名判例です。

有責配偶者からの離婚請求|どんな事案だったのか?

事実経過の概略は次のとおりです。
夫婦は、昭和12年2月に婚姻。
子はなく、昭和23年に女の子と養子縁組。
昭和24年、夫の不貞の事実を妻が知り、夫婦仲が悪化。
昭和24年8月、夫は家を出て別の女性と同棲を開始し、子が生まれれる。
昭和26年、夫は離婚訴訟を提起するも、夫が有責であるとの理由で、認められず(請求棄却)。
 ~~~
昭和58年、夫は妻に離婚を求めるも、拒絶される。
昭和59年、離婚調停申立をするも、不調に終わる。
昭和59年、夫はふたたび離婚訴訟を提起した。
昭和60年、第一審判決が下る。夫敗訴(東京地判昭和60・6・28)
昭和60年、第二審判決が下る。夫敗訴(東京高判昭和60・12・19)。
そこで、夫が上告した。

要は婚姻から47年も経過した後の提訴であり、
その間の別居期間も36年を経過していたという事案です。

有責配偶者からの離婚請求|裁判所の判断は?

昭和26年の判決も、本件第一審も、第二審も、すべて、
夫が有責であるとの理由で、夫からの離婚請求を認めなかったというわけですが、
これが何を意味するのかといいますと、
訴訟においても、妻が一貫して離婚を拒否し続けていたことを意味します。
(妻が離婚に同意したら、こんな結論にはならない)

昭和26年時点の裁判で敗訴することは受け入れられたとしても、
以後、30年間もの別居期間を経て、満を持して提訴した裁判でも、
離婚が認められないとの判断を下された夫の絶望たるや。
人の寿命を考えた時、ここまで形だけの婚姻を維持することが、
夫にとっても、妻にとっても、本当に幸せなことなのか。

この男性としても、ここで引くわけにはいかなったでしょう。
最高裁の判断を仰ぐことになります。

有責配偶者からの離婚請求|最高裁判所の判断

最高裁判所は、結論として、夫からの離婚請求を認める可能性があるとして、
第二審の判断を破棄して、審理を東京高等裁判所に差し戻しました(東高判平成元・11・22。家裁月報42巻3号80頁)。

最高裁判所の判断の要点は次のとおりです。

つまり、最高裁判所は、
(1)まずは大上段のお話として、
・民法770条5号(婚姻を継続し難い重大な事由)は、責任のある配偶者からの離婚請求を許さないとしているわけではない。
・だからといって、自ら離婚の原因をつくりだした配偶者からの離婚請求を無制限に認めることも行き過ぎである。
・離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであってはならない。
・民法全体の指導理念たる信義誠実の原則に照らして容認されないような、離婚請求は認められない。
と説明して、
信義誠実の原則に反するものではない限り、
有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があることを宣言しました。

(2)次に、信義誠実の原則に照らして許される離婚請求かどうかは、
・有責配偶者の責任の態様・程度
が考慮されるべきであるが、
・相手方配偶者の婚姻継続についての意思、有責配偶者に対する感情
・離婚を認めた場合の、相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態
・離婚を認めた場合の、夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況
・別居後に形成された生活関係(夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況
が斟酌されなければならず、
・時の経過が、上記諸事情に与える影響
も考慮されなければならないとして、
有責配偶者からの離婚請求が、信義誠実の原則に照らして許されるものかどうかを判断する際の、
考慮要素を示しました。

(3)そのうえで、次の場合には、離婚請求が認められるための必要条件として、次の3要件を定立しました。
つまり、有責配偶者からの離婚請求であっても、
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
②夫婦の間に未成熟子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと
という3要件を満たすのであれば、有責配偶者からの離婚請求であっても認められる場合があるとしたのです。

有責配偶者からの離婚請求|3要件をすべて満たす必要があるのか?

最高裁判所から提示された3要件は、どのように評価されるべきなのか。
まだまだ解釈の余地があるようです。

①相当の長期間の別居期間が必要といっても、別居期間が何年続いている必要があるのか。
②未成熟子がいるとの一点をもって、絶対に離婚が認められなくなってしまうのか。
③上記にいう特段の事情があるとなれば絶対に認められなくなってしまうのか。

細かな事情を考えれば考える程、
最高裁判所のいう3要件は、
目の荒い網のようで、
本当に離婚を認めるべきケースを取りこぼす、
ある意味、欠陥を抱えているようにも思えます。

実際は、3要件すべてを満たさないケースであっても、
離婚を認める判決はでております。(機会を改めて、ご紹介いたします)

そのような判決は、
前記でいうところの、
(3)の3要件ではなく、
(2)の考慮要素を検討していることが多いようです。

有責配偶者からの離婚請求|青島弁護士の見解

離婚を認めてあげるべきか、
離婚を否定しなければならないのか、
については、
必ずしも前記(3)の3要件のみで判断できるとは思えませんので、
私としては、各地の裁判所が、最高裁判所の3要件に必ずしもしばられない判断をすることは、
よいことだと思います。

未成熟子がいようが、離婚を認めると判断するべきケースはあるでしょうし、
別居期間が短かろうが、離婚を認めるべきであろうケースはありますからね。

有責配偶者からの離婚請求|当事者になった場合はどうすればいいのか?

もしあなたが離婚請求をしたい有責配偶者になってしまったら。。

3要件を満たしているから、離婚ができる。
3要件を満たしていないから、離婚できない。

そのような単純な判断はしないほうがよいと思います。

同じように、もしあなたが、有責配偶者からの離婚請求を受ける相手方配偶者になってしまったとしても。。

3要件を満たしていないから、離婚されることはない。
3要件を満たしているから、離婚されてしまう。

そのような単純な判断はしないほうがよいと思います。

裁判所の判決文は、
いわば結論ありきで書いていくものですので(裁判官は怒るかもしれないが、絶対にそう)、
結局、個別の事案ごとの事情をふまえて、
担当裁判官が直観的に、
これはあり(離婚を認める)、これはなし(離婚を認めない)と決めたら、
後は、その結論に導きやすい理屈を採用して、判決文を紡ぎます。

裁判所は、裁判所に提出された主張をふまえて、
上記3要件を満たすかどうかの検討をしたり、
他の事情を強調して、時に離婚を認めたり、時に離婚を認めなかったりするわけです。

我々としては、提訴先の裁判所に、
どこまでの細かい事情を、どこまで詳しく、どこまで具体的に伝えていくかの勝負となります。

あなたが、もし離婚に悩む当事者になってしまったら、
過去の経緯から現状に至るまでのすべてを、
自分に都合にいいことも、わるいこともすべて、
弁護士にすべてを打ち明けて、
どこまでの勝負ができるものか、それなりの見通しをもったうえで、
必要な手続き(調停、訴訟)をとっていただければと思います。

(民集41巻6号1423頁、判例時報1243号3頁、判例タイムズ642号73頁)


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